彼女のすべてを知らないけれど


「……あなたがミコトと話しているのを聞いたわ。私のことを好きだってあなたは言った。その瞬間、急にこわくなったのよ。それまでは、素直に好意を伝える気でいたのにそれをためらってしまうくらいにね……」

「何がこわかったの?はじめからそう言ってくれたら……」

「だって、この恋はハッピーエンドにならないもの。アナタを確実に傷つけることになる。それがこわかった……」

「ハッピーエンドにならない?どうしてそう思うの?俺、ずっとウィンクルムを大切にするよ?」

ウィンクルムと幸せになる。

初めての恋だから、恋愛経験豊富な人に比べて失敗もたくさんしてしまうかもしれないけど、ウィンクルムの不安や悩み、喜びも全部、俺にも分けてほしい。

「一緒にいようよ、ずっと。ウィンクルムの飼い主だった人を探すのも手伝うから、これからは一人で動かなくていいんだ」

「……もういいのよ。そのことは……」

「もういい?」

「ええ。たしかに私は、私を捨てたあの人を探すためにあなたがくれたお守りを使って人間に生まれ変わった。あの人を探しだして、一言ちゃんと言いたかったの。猫にもひとつの命があるんだって。

でもね、今はそんなことどうでも良くなったのよ。あなたのそばにいる口実がほしくて、あの人を探すフリをしていただけ」

「そんな……!人間に生まれ変わってまで叶えたかった願いなら叶えないと後悔するって!」

俺は強く言ったのだけど、ウィンクルムは穏やかな顔で首を横に振るだけだった。

「もういいのよ。あなたに出会えたから……」

「ウィンクルム……」