彼女のすべてを知らないけれど


ウィンクルムとの関係が悪くなる。それしかないと思った。どう転んでも、それ以外の選択肢はナイって。

そうなっても仕方ない、と、諦めの気持ち。

だからこそ、次の瞬間起きた出来事に、俺の心はついていかなかった。

「そんな可愛いことを言わないでちょうだい」

たしかにそう言い、ウィンクルムは俺の頬にキスをした。

「な、に……?」

何をされたのか、わかっていても頭がついていかなかった。ボンヤリしてしまうのは熱のせいじゃない。

ウィンクルムは両手で優しく俺の頬に触れ、まっすぐこっちを見つめた。

「私もあなたのことが好きよ。猫としてじゃなく、人間の女として」

「うそ…でしょ?」

「本当よ。今まで突き放すようなことしかしてなかったから信じてもらえないかもしれないけれど」

ウィンクルムはうつむき、俺の胸に顔をうずめる。

……本当に、俺のことを……?

やっぱり、すぐには信じられない。かといって、病気の俺に気を遣ってウソをついているとも思えなかった。彼女の口調は本気っぽい。