ウィンクルムが用意してくれた具だくさ んのうどんを目の前にし、ますますうぬ ぼれ的思考は強くなる。
そんなバカな考えを打ち消すべく、彼女 のうどんを口にした。
今までどこかで食べたような普通のうど ん。なのに、今まで食べたどのうどんよ りあたたかくて、体にしみる優しい味が した。
体調が良くないせいか、うどんの味に感 激したからか、俺は食べる手を止め、と んでもないことを口走ってしまってい た。
「嬉しいな。好きな子に看病してもらう のって……。うどん、おいしい。すぐ元 気になれそう。でも、食材とか足りた? 残り物しかなかったと思うけど……」
「買ってきたのよ。いつもあなたと行く スーパーで」
俺の気持ちをスルーされたことに、ホッ としたような、残念なような。
「そう。ありがとう」
普段から、ある程度自由に動けるよう、 多少のお金をウィンクルムに渡してい た。それで食材を買ってきたんだろうか ら、ちゃんと返さないとな。ウィンクル ムに渡したお金は彼女のものだ。
「財布、いつものとこにあるから、使っ た分、そこから持ってって?ありがと う、おいしかった」
ごちそうさまと手を合わせる俺を見て、 ウィンクルムは小悪魔っぽく笑った。意 味深な笑顔に、ドキッとしてしまう。
「スーパーの帰りに、ナンパされたわ」
「ナンパ!?大丈夫だった!?やっぱ り、遅い時間に一人で出歩くのは危ない んじゃない?」
「大丈夫よ。スーパーへ行ったのは今日 の昼間だし、声をかけてきた男もかっこ よくて優しそうで良識的なタイプだった から、変なことはされなかったわよ」
ニコニコしているのはそのせい?もしか して、その男の人と親しくなった、と か!?
幸せ気分は急下降。一気に奈落のドン底 に突き落とされたような気がした。
「それで、その人とはどうなったの?」
尋ねる声が震える。元から感じていた寒 気が混じって、嫌な感覚だ。
「どうしたと思う?」
「質問に質問返しはナシ!」
「ふふっ。どうもしないわよ。安心し た?」
「へっ?何もないの?ニコニコしてるか ら、てっきり……」
「女は嘘笑いが得意なのよ。覚えておき なさい」
彼女なりの冗談だってのは分かるけど、 俺は笑えなかった。
「どうして俺にそんなこと話すの?ヘコ めばいいって思ってる?」
「さあ、どうしてだと思う?」


