彼女のすべてを知らないけれど



上体を起こすと、ずっしりした何かがベ トッと湿った音を立てておでこから落下 した。

水でぬらした、おしぼり……?

ウィンクルムがのせてくれたものらし い。

俺が起きたことに気付き、ウィンクルム もゆっくりベッドから顔を上げる。

「起きたのね」

「寝かせてくれてありがとう。よく、こ こまで運べたね」

「あの神様がタイミングよく手伝いにき てくれたのよ」

「そう、ミコトが……」

自分がこうしている事態に納得すると同 時に、頭がものすごく熱いことに気付い た。

「寝てなさい。あなたは今38度も熱が あるのよ」

「そんなに?」

「夕食の支度なら私がやるから、いいこ と?あなたは安静にしてなさい」

「……はい」

見た目は中学生の女の子なのに、内面は ものすごく年上のお姉さんみたいだ。

俺は、彼女にうながされるままベッドで 体を休ませ、部屋の扉越しにウィンクル ムが料理する時の音を聞いた。

――不思議だな。フラれた相手にこんな に優しくされるなんて。

ウィンクルムにとっては同居人に対する 義理でしかないんだろうけど、体調の悪 い時に大切な人に看病してもらうのは秘 かな夢だったから、それが叶って、けっ こうジーンときてしまう。

熱も高いし、風邪かな?夏風邪は長引 くっていうし、ウィンクルムにうつった ら大変だから早く治さないと。

色々考えていたら、熱のせいか頭が ボーッとして、再び俺は眠ってしまっ た。