彼女のすべてを知らないけれど


どのくらいの間、気を失っていたんだろ う。

ものすごく不安な気持ちで真っ暗闇の中 をトボトボ歩く。そんな夢から覚めて目 を開けると、薄暗い天井が目に映った。

「寝ちゃってたんだ、俺……」

ベッドルーム。見慣れた部屋。安心した けど、あまりいい夢を見なかったせいか 不安感だけはしっかり残る。

どうしてあんな夢を見たのか分からない けど、右と左、どっちを見ても真っ暗 だった夢の世界に比べたら、この部屋の 方がいくらかマシなはず。

……ん?

寝たまま視線を下にやるとベッド脇に つっぷすウィンクルムに気づいた。

彼女の姿を見た瞬間、モヤモヤした気持 ちは一気に晴れた。

「帰ってきてたんだ。よかった……」

やっぱり、この感じがいい。誰にも邪魔 されない二人きりの空間。

はじめの頃はドギマギしていたものの、 今の俺は、彼女なしでは落ち着けなく なっていた。

ウィンクルムには自分の飼い主だった人 間を探すっていう目的があるにして も……。