彼女のすべてを知らないけれど


里桜とタクがいなくなった後のアパート は静かすぎて、俺は動揺した。この部 屋、こんなにシンとしてたっけ……。

これからまた、ウィンクルムと二人きり の生活に戻る。いま、彼女は出かけてる みたいだけど、そのうち帰ってくると思 う。

こうして里桜がいなくなると、想像以上 に心細くなってしまい、そんな自分が ちょっとおかしかった。

「もう夜か。カフェでけっこう時間潰し たもんな。夕食、何にしよう……」

冷蔵庫には、先週買い出しに行った時の 残り物がある。何を作ろうか……。

考えようとしても何も思い浮かばない。 こういうこと、わりと得意だったのに な……。

いつからだろう。さっきから頭がボーッ とするし、体がダルい。里桜の恋愛問題 が解決したことで、ホッとしたせいなの かな。

冷蔵庫を開けっ放しにしながら考えてい たので、全身に寒気が走った。

「……寒い……」

里桜もいなくなったし、クーラーの温 度、上げようか……。

そのまま俺は、いつの間にか冷蔵庫の前 で倒れてしまった――。