彼女のすべてを知らないけれど


里桜は不満げに、

「ウィンクルムちゃんと、付き合いたい んでしょ?正攻法が効かないならこうい うやり方もありだと思うけど」

「タクに嫉妬させるためにココに泊まり 込んでる里桜らしい考え方だね……」

それに、人の困り事を放っておける性格 じゃない。里桜は俺の幸せのためにそう 言ってくれてるんだろう。でも……。

俺は、里桜の提案を断った。

「ありがとう。正直言うと、ウィンクル ムにフラれたことはけっこうキツいし、 まだ納得できてない部分もある。

でも、こういうのって、第三者にどうに かしてもらう問題でもないし、その時が 来たら自然に縁が結ばれる、そういうも のだと思うから、無理にどうこうせず、 見守りたいんだ。自分のことなのに『見 守る』って言うのもヘンだけど……」

「そっか…でも……」

俺の言葉をゆっくり飲み込むように聞き 入れつつ、まだスッキリうなずけないと いった面持ちの里桜。

どうやって理解してもらおうかと考えて いると、突然、玄関の扉からけたたまし い音がした。ドンドンと、人の拳が強く 叩きつけている。

郵便配達の人にしては荒々しいし、用事 ならインターホンを鳴らしてほしい。

警戒せずにはいられず、俺はビックリし て固まっている里桜を部屋の奥に行かせ て、ドアアイを覗いた。

「タク……!」

扉の向こうに居たのは、高校時代の友達 タクだった。

里桜がここにいることを知ったんだろ う、ドアアイから見えるタクは険しい顔 をしていた。