彼女のすべてを知らないけれど


ウィンクルムは、そっけなかったここ数 日のことをすっかりなかったもののよう に明るい声で、

「聞き分けのいい男は好きよ。これから もルームメイト兼友達としてよろしく」

彼女らしくない陽気過ぎる微笑み、だと 思ってしまったのは、俺の気のせいだろ うか……。

「ありがとう、ウィンクルム。

じゃあ、帰ろうか。里桜も心配してた し。っていっても、今は寝てるけど」

「あなたの友達にまで心配をかけて、悪 いことをしたわね。

私も夜風を堪能したことだし、そろそろ アパートで眠りたいと思っていたところ よ」

あっさり。拍子抜けするほど普通。

冷たくされたのも、気持ちを拒絶された のも、みんな夢だったみたいに、俺達は 仲良く夜の道を歩いた。

こんな夜中にも関わらず、ウィンクルム がプリンを食べたいと言い出すものだか ら、少し遠回りしてコンビニに寄った。

楽しそうにスイーツコーナーを見ている 彼女。それを、少しだけざわつく気分で 見ている俺。

こうしてると、俺達二人は恋人同士っぽ く見えるのかな?それとも、兄妹?


幸せなのに、

そばにいられて嬉しいのに、

一緒にいて楽しいのに、

彼女は俺を好きじゃない――。

こんなにも、胸が熱く、ひりひりしたの は初めてだった。


いつまでも、朝が来なければいいの に……。二人で同じ時間を、誰にも邪魔 されずに過ごせたらいいのに……。