「私は……」
ウィンクルムが口を開いた。
「前に私を育ててくれた飼い主に会いた くて人間になった。目的はそれだけな の……」
「そうだったんだ……。何か目的があっ て人間になったんだろうなとは思ってた けど……。
そういうこと、初めて話してくれたね」
アレ?意外に良い展開?少しホッとし た。
「だからね……。私にはそれ以外の感情 や目的を持つ気はないのよ。言っている 意味、分かるかしら?」
ドクン。心臓が嫌な音を立てた。
何を言おうとしてるの?彼女は、俺に とって都合の悪いことを告げようとして る?
その予感は的中した。
「先日、あなたとミコト神の会話を偶然 耳にしてしまったわ」
俺とミコトの会話を……?いつ?どうい う会話を聞かれたんだ?それが、彼女の 態度を大きく変えた理由なの?
「あなた、私に恋心を抱いているのね。 二人の会話から、私はそう解釈したのだ けど」
「あ、いや、それは……!」
認めたい。心の中では認めてる。でも、 今それを口にする勇気はなかった。だっ て……!!
「人の話を盗み聞き……。行儀の悪いこ とをしたわね。それについては謝るわ。 ごめんなさい」
「それは、あんな所で話してた俺が悪い んだから、ウィンクルムは謝らない でっ」
ふーと、ひとつ長いため息をつき、彼女 は言った。
「あなたの気持ちにこたえることはでき ない。
私のことはすぐにでも忘れて、他に素敵 な女性を見つけなさい」
「…………」
迷いのない、まっすぐな目だった。


