彼女のすべてを知らないけれど


「もったいないなーと思ってたんだぁ。 その気になれば恋を楽しめる環境にいる のに。

湊の人生はまさに、宝の持ち腐れモード だよっ」

「ははっ、なにそれ」

そういえば、ミコトにも同じようなこと 言われたな。恋しろ恋しろって、しつこ く勧められたっけ……。

里桜は、さらにこう言った。

「顔もいいし、頭もそこそこいいし、気 遣いができて優しいし。湊がモテるの、 分かるもん。

私、タクと出会ってなかったら、湊を好 きになってたよ、きっと」

「それ、タクが聞いたら泣くよー」

「いいよ、泣かせとけば」

「ひどっ!っぷ、ははは!」

「あはははっ!」

どちらかともなく、笑い合う。

「でもね、湊には欠点がひとつある!臆 病なとこがタマにキズかな」

「うん、自覚あるよ。性格だし、どうに かなるものならそうしたいけど、どうし たらいいのか」

「あの子と、ちゃんと話した?」

「え」

里桜の目が、突然真剣になる。

俺はゴクンと唾をのんだ。

「隠してるつもりかもしれないけど、 湊、あの子のこと好きなんでしょ?見た ら分かる。その気持ち、ちゃんと本人に 伝えた?」

「そんな、伝えるのはまだ早いっていう か……」

彼女は元猫だし、人間の俺の気持ちを受 け入れてくれるかどうかは分からない。