彼女のすべてを知らないけれど


「どう?私の料理の腕前を目の当たりに して、思わず恋人にしたくなった?」

「恋人にしたいかどうかはともかく、す ごいおいしいよ」

「トーゼンだよっ。タク、パスタが大好 物でさ、しょっちゅう作ってあげてるか ら」

「そうなんだ。タク、幸せ者だなー」

こんなにおいしいパスタ、俺、作れたこ とない。

今度、ウィンクルムにも食べさせてあげ たいなー。レシピ知りたい。

俺の考えを見透かしたみたいに、里桜は ガスコンロにある鍋を指さした。

「もう一人、ここに住んでるんでしょ? その子の分もソース残してあるから、後 で食べてもらおうよ。パスタは食べる時 に茹でてもらえばいいし」

「ありがとう。何から何まで。里桜、す ごいなぁ」

「そう?たまたま上達しただけだよ。実 家暮らしだから他の料理はぜーんぶお母 さん任せで自分では作れないし」

パスタを食べ終えても、久しぶりの再会 で話は盛り上がる。二時間くらい話し込 んでいたというのに、ウィンクルムは 帰ってこなかった。

「同居人の子、遅いねー」

皿を洗いながら、里桜が言った。

「どんな人なの?私も友達になりたい なー。湊の友達なら、きっといい子なん だろうし」

「そうだね」

外の暗さが気になり、俺は心ここにあら ずな返事をした。里桜にはまだ、ウィン クルムのことを話していない。

里桜と話してる間、ウィンクルムが ひょっこり帰ってくるかもと思ってたけ ど、空もだいぶ暗くなってきたし、心配 になってきた。

「……ごめん里桜。ちょっとこの辺見て くる」

「へっ?」

「からかわれると思って黙ってたんだけ ど、同居人の子、女の子なんだ」

「そうなの!?」

意外そうな顔をしつつ、こんな状況だか らか、里桜は深く突っ込んでこなかっ た。

「そういう大事なことはもっと早く言っ てよ!迎えに行ってあげよう!」