彼女のすべてを知らないけれど


「だって、このままじゃ倦怠期に突入し て別れ、ってパターン確定じゃん。

そんなの嫌だから、私、タクとの関係に ちょっとした刺激を追加してみようと 思って」

「いや、それはそれで分からないでもな いけど、色々ブッ飛びすぎだよ」

こうなっては止められない。

里桜は俺に裸の五万円を押し付け、こう 言った。

「タダでとは言わないよ。これ、生活 費。一週間でいい!湊んち泊めて!!」

「はぁ!?」

なんでだよ!!

それまで比較的冷静に話を聞いていた俺 も、さすがに反対意見を主張したくなっ た。

「タクがいるのに他の男のアパートに住 むって、どうかと思う!だいたいタクに 知られたらどうするの!!タクは俺の友 達でもあるんだよ!?

もうちょっと話し合ったら?さすがに、 大学サボってまでこんなことするの、ダ メだって!」

「も――。湊はホント、カタいんだか ら」

俺の力説(?)もむなしく、里桜には敵 わなかった。

「湊もいつか分かる日がくるよ。男と女 にはね、話し合いじゃ埋められない溝っ ていうのが生まれるの。それを、状況を 変えることでウソみたいに解決できるこ とがあるの。

湊が協力してくれれば、私とタクはまた 仲良くなれるかもしれない」

「んー、たしかに、そういうの俺にはよ く分かんないけど……」