彼女のすべてを知らないけれど


「おかえり!お腹すいたでしょ。夕食で きてるよ」

いつも通り、俺はウィンクルムに話しか け、食卓を整える。

玄関先で靴を脱ぐ彼女に、昼間用意した 金魚の水槽のことも報告した。

「これ、昨夜の金魚。勝手に色々買って きちゃったけど、どう?」

「いいんじゃない」

たった一言そう返したきり、ウィンクル ムは口を開かなかった。

無意識のうちに、何か明るいことを言っ てくれるって期待していたのかもしれな い。

そんな期待からかけ離れた彼女の態度に 悲しくなったからか、それとも、ウィン クルムの声が今まで聞いたことのないく らい冷ややかだったからなのか、俺の背 筋は心細いくらいうっすら寒くなった。

「どうかした?体調悪い?外で何かあっ た?」

こっちと目を合わせようとしないウィン クルム。

嫌な意味でドキドキしながら、うつむく 彼女の顔をのぞきこもうとした。する と、まるで俺の視線を拒絶するみたい に、ウィンクルムは寝室に足を向ける。

「何でもない。夕食は外で済ませたから いらないわ」

「じゃあ、シャワー浴びてきたら?」

「いい。疲れた。寝る」

それきり、その日はウィンクルムと会話 することはなかった。