彼女のすべてを知らないけれど


あんまりお腹は空いていないけど、ウィ ンクルムが空腹だとまずいと思い、 ちょっと早めに夕食の支度をした。

けっこう気合いを入れて、普段はやらな い手間のかかるものを作ったはずなの に、それも夕方には終わってしまって、 俺は時間をもてあました。

「ウィンクルム、どこに行ったんだ ろ……」

落ち着かない気持ちで部屋の中を行った り来たりした。

もう、やることもないし、どうしよう。 掃除でもしようかな!

掃除に使う洗剤や雑巾を棚の中から取り 出そうとした時、テーブル上のスマホが 鳴った。交流アプリ専用の着信音だっ た。

「……!」

アプリを通して、時々やり取りしている 相手からのメッセージだ。

《暑いねー!湊は、元気?》

《元気だよ。ほんと毎日暑いね。そっち は元気?》と返し、アプリ画面を閉じ る。

今、メッセージを交換しあった相手の名 前は、市橋里桜(いちはし・りお)。彼 女は、高校の時同じクラスだった。

里桜には高校の頃から付き合ってる彼氏 がいる。ちょっとぶっ飛んだところはあ るけど、男女関係なく友達の多い、サバ サバした女子だ。仲間想いの優しい人。

然と知り合う前、クロムの件で最も俺を 心配し気にかけてくれていたのも、里桜 だった。

高校を卒業してから進路が別れ、遊んだ りはできていないけど、こうしてアプリ 上の交流で友人関係を保っている。


今日も、いつも通り軽い挨拶や近況報告 のやり取りで終わるのかと思っていたか ら、里桜から来た最後のメッセージに俺 はびっくりしてしまった。

《湊も元気そうでよかった。もしかし て、彼女できた?》