「おおかた回った気はするけど、まだ、 全ての店を回り切れてない気がする なぁ」
「そうね。帰るにはまだ惜しいタイミン グね」
広い神社の敷地内。
次はどこへ行こうか、ウィンクルムと二 人考えていると、人の気配で溢れた景色 の向こうに、ひとりポツンと佇(たた ず)む人影があった。
その人は、屋台を見るでもなく、何かを 食べるでもなく、誰かを待っている風で もなく、ただひとり、悲しみに沈んだ顔 で、人気(ひとけ)のない石垣にもたれ る。
彼は、他でもない、然だった。
「然!!」
ちょっと遠いけど、俺は然に声をかけ た。
元カノはどうしたんだ?
「あの男、一人?連れの女はどうしたの よ」
ウィンクルムも怪訝(けげん)な顔をす る。
然は俺の呼び掛けに気付いていない。
「然のところに行ってみよう!」
ウィンクルムの手を引いて、俺は人混み をかき分ける。
にぎやかな祭の景色。人々の楽しそうな 話し声。
その中で、然の存在だけがポツンと浮い て、ひどく寂しそうに見えた。


