彼女のすべてを知らないけれど


もしかして、ウィンクルムなりに俺を元 気づけようとしてくれた?

少し先を小走りで行く彼女の背中を見 て、俺の気持ちはさっきより軽くなって いた。

然と元カノがうまくいくよう、そっと祈 る。


「あ、金魚すくいあるよ。やる?」

「あなた、あんなものに興味があった の?」

小学生の群れが出来た金魚すくいコー ナーを見て、ウィンクルムは不可解と いった顔をしている。

「いや、俺じゃなくて、何となくだけど ウィンクルムが好きそうだと思って」

「なにそれ。猫は魚が好物っていうベタ な図式を元にした思考かしら?」

「違った?」

「猫はわりと肉食なのよ。覚えておきな さい」

不満なのか満足なのか。よく分からない 顔つきでウィンクルムはそう言った。

「はーい。ちゃんと覚えておくよ」

猫は肉食。そういえば、クロムも魚より 肉の方をよく食べてたっけ。

……あれ?

今、気持ちが穏やかだ。

クロムのことを思い出すと苦い気持ちに しかならなかったのに、今は違う。

クロムとの出会いから別れまでの時間。 それら全部が、優しい記憶になりつつあ るのかもしれない。

これは、ウィンクルムのおかげ??元猫 の彼女と、色んな時間を過ごしてきたか ら――。