彼女のすべてを知らないけれど



「湊。実は今日、ここに元カノが来るん だ」

「えっ!?」

あれから二時間近く屋台を回り、ウィンク ルムがトイレに行っている間、外で待って いた俺に、然が言った。

祭の場所から離れた静かな場所だからか、 然の声はやけに大きく聞こえた。

「別れてからも、元カノとは時々連絡取っ てたんだ。あ、もちろん、友達としてな! 深い意味はないんだっ、全然」

笑って話す然は、ちょっとだけ切なそうに 見える。

「元カノって、前に話してた……?」

「うん、そう。気まずい別れ方したわけ じゃないし、付き合いやめたからって連絡 先消すのも露骨っていうか、重い男って思 われそうだし、そんな感じで、今まで ずーっと、友達みたいにやり取りしてて。 っつーか、もう普通に友達だよな、ハハ ハ」

「…………」

「でさ、この前も、何となく電話した時、 今日の七夕祭りの話になってさ。元カノと 付き合ってた頃、行きたいなって話してた のに、お互い予定が合わなくて結局行けな かったから、今夜こそはってことで、案内 役頼まれてさ」

それで、今日はいつもよりテンション高 かったんだ……。