彼女のすべてを知らないけれど




ウィンクルムと一緒に暮らすようになって、半月が経った。

もう、彼女はすっかり、人間の生活になじんでいる。

本格的に夏が近付いてきた。軽く動くだけで汗ばむ。


「じゃあ、行ってくるよ。俺が帰ってくるまで、誰が来ても玄関開けちゃダメだよ」

「わかってるわよ。毎日同じことしか言えないの?たまには『お土産買ってくるから何がいい?』くらい言いなさいよ」

「わかったよ。何が食べたいの?」

「栗のモンブランケーキ」

大学に行く前、ウィンクルムは毎日のように玄関先でこうして俺を見送ってくれる。時々、寝ていることもあるから、そういう時は一人で出掛けるけど、彼女の見送りがない日は寂しいと思ってしまうまでに、二人暮らしが当然のものになっていた。


「じゃあ、行ってきます」

「気をつけてね」

帰ってくる時と同じように、合鍵を使って、俺は玄関を閉める。

なんだか、こういうの、同棲みたいで照れるな。なんて、こんなことをウィンクルムに言ったらどんな反応されるだろう。「バカじゃない?」って、そっぽを向くかな?