教室に入ると、
もうほとんどの生徒がいて
いくつかのグループが出来ていた。

俺は誰にも話しかけず、
黙って適当な席についた。

俺に話しかけてくるやつも何人かいたが適当にあしらって突き放すと、不機嫌そうに別のやつのところにいった。



俺は友達なんていらない。
必要ないんだ。
放っておいてくれ。



そう心の中でつぶやいて、
ため息をついた。


とりあえずやることもない俺は
本を読んでいた。

俺は別に暗いやつな訳じゃない。

昔は普通に友達もいたし
今、周りにいるやつらみたいに
友達と話したり、
ふざけあったりしていた。


『あの時』までは…





なんとなく昔を思い出して
一人で苦笑していると、
誰かが俺の顔を
覗き込んでいることに気がついた。


「うわっ」

俺が驚いて飛びのくと、
そいつはにっこりと笑った。


「なにやってんの?
 誰かと話さねーの?」


なんだ…
またこういうやつか。
俺なんか放っておけばいいのに。


「お前には関係ねーだろ。」

「関係あるよ。
 クラスメイトだろ?」


あぁたまにいるんだよな。
なんていうか、
俺みたいに一人で孤立してるやつ見ると
どうしても放っておけないやつ。

まぁ俺は望んで孤立してんだけど。


とにかく関わると面倒そうだから、
無視を決め込むことにした。


「おーい。
 聞いてる??」

無視。


「おーい?」

無視。


「もしもーし」

無…視…


「ってかさっきから何読んでんの?」

そういうと、
そいつは俺の読んでいた本を
いきなり取り上げた。


「うわっなにすんだよ!」

「へぇー。難しそうな本だね?」

「お前みたいな馬鹿には
 到底わかんないだろうよ。」


相手を苛立たせようと、
挑発するように
少し笑みを浮かべながらそう言った。


「そうだね?俺にはわかんないや。」

そいつはそう言うと
「ほいっ」と俺に本を返した。


意外とあっさりした反応に少し驚いたが
これで興味をなくしただろうと
また本に目を落とした。



しかし
そいつはまだ俺に話しかけて来た。

「ねー話そうよ?
 俺の友達があっちにいるからさ?
 と言っても俺もさっき
知り合ったばっかなんだけど。」


今さっき出会ったばっかのやつを
『友達』なんて呼べんのかよ。
くだらない。

そんなことを考えつつ、
俺はだんだんイライラしてきた。



「なーってばー」

「…るっせぇな!!!」

とうとう我慢できなくなり、
思わず大声で言ってしまった。



あぁクソ。やっちまった。



誰とも関わりたくないし
友達だって作る気はないが、
クラスのやつらに
嫌われたいわけじゃなかった。

むしろ、無駄に敵を作りたくなかった。
怖がられるなんてもってのほかだ。


クラスのやつらの
ヒソヒソ話す声が聞こえてくる。


[なになに?どしたの?]

[さぁ?なんかいきなり
 怒鳴ったみたいだけど…]

[あいつなんで怒ってんの?]

[ねぇなんか怖くない?]



はぁ…
高校生活も初日にしてこのザマだ。


心の中でため息をつきつつも、
みんなの視線に絶えきれなくなった俺は
教室を飛び出した。