教室に戻ると、もう桜はいなかった。


「もー、小春!坂内くん、小春が遅いから教室に帰っちゃたよ?」


「...菜乃花」


「...ん?」


菜乃花が何かを悟ったのか、優しい声になった。


「...私、頑張る。負けないよ」


「...そっか。頑張って」


そう言って、頭をなでてきた。


...うん、私、頑張るよ。


もっと、桜に近づけるように。


ありがとう、菜乃花――――。