それから2時間待っても、5時間待っても母親は来なかった。


そして夜になって、


元々『育てられている』という感覚はなかったから、


『捨てられた』と気付いた時には、


――――涙も出なかった。


それから俺は、施設で抜け殻のように育った。


でも、ある日、公園で泣いている女の子を見つけた。


その子がどうしても気になって、声を掛けてしまったんだ。


抜け殻の俺が、その子を元気づけられるわけがない。


だけど、その子の涙を止まらせることはできるかもしれないから、精一杯笑って、言ったんだ。


『ホラ、上を見て、空がきれいだから』


そう言うと、その女の子は今まで見たこと無いくらい綺麗な笑顔で、


『ありがとう』と言った。