~桜 side〜

昔、俺が6歳のころ。


若い母親は、母親らしいことを何一つしない人だったのに、急に


『―――、お出かけしよっか。』


と笑顔で言った。


珍しいとは思ったけど、お母さんが笑顔でおしゃべりしてくれたことが嬉しくて、俺は母親について行った。


だけど――――某デパートに着いた途端。


『―――、お母さん、ちょっと行くとこあるから、待っててね。』


『待って、僕も行く』


『―――は良い子だから、静かに待っていられるよね。』


と言って、手を振って言った。


『―――、バイバイ―――』


待って、待って、お母さん。



行かないで。



一人は、嫌だ―――――。