空色チョコレート

馬渕綾芽の背中を見ながら、あたしは小さな声で言った。


「でもね、好きな人が、他の人を想ってるのに自分といてくれるのを見てると、思いのほか、辛いんだよ」


あたしの小さな声に気付いたのか、馬渕綾芽は足を止めた。


「...アンタ、人を何が何でも欲しいって思った事ないでしょ。そんな奴に、何も言われたくない」


そう言い捨てると、速足で階段を下がって行った。


「...こんなことしても、自分が傷つくだけなのに」


あたしの声は、誰もいない屋上に小さく響いた――――。