妙な感じになってきたな、と戸惑いを覚えつつ。

 二度の偶然は親しみやすさに変身して、部署違いのお偉いさんと私たちを近付けた。


 女子社員なんてわたし達の他にも何人と居るのに、なぜ彼はわたし達に気を巡らせるのだろう。

 いや、逆か。

 なぜわたしは知り合ったばかりの別の部署のお偉いさんに、こんなに心を乱されているんだろう。

 しかも既婚者。


 乗り物酔いは、お蔭さまで少し良くなった。

 気を利かせて席替えをしてくれて、わたし達二人の座席は課長の斜め後ろになった。


 ビール缶を持つ指はごつごつとまではいかず、けれど指先はわりと太い。

 食いこみ気味になったプラチナのリングが、胸をざわめかせた。

 もともと気乗りしない旅行が、さらにユウウツになった。

 きっとわたしは、祐介を嫌うための理由を探そうと思っているんだ。


 『女は子宮で考える』か。

 脳みそのようにグダグダとモノを考えない肉の器官は、とてもシンプルな志向をしていた。

 しっかりした骨太の指先に、欲情している。