「ねえ、名前なんていうの?何組?」









寮に行く途中の道で、今までずっと聞くことができなかったことをようやく聞くことができた。









「え、俺のこと知らないの?」






驚いたように振り返る楓くんとやら。




「え、自惚れ?」






「今すぐキスしてあげよっか」






「や、遠慮しときまッ………んっ」









まただ。






こんな風にキスをされるのは不愉快というか、なんというか。





ファーストキスだって好きな人としたかったのに。





セカンドキスもまたこいつに奪われてしまった。







会って二回目で二回目のキスを。







どんだけキス魔なんだよ。








どんなに抵抗しても抑えられちゃうんだから抵抗するだけ無駄で。









その分苦しくなるだけだった。









あーあ、もう、酸素が足りてないしッ…。









本能的に口で酸素を取り込むと、待ってましたとばかりに楓くんの舌が入ってきた。









ピチャピチャと音を立てながら私の舌を弄ぶ(もてあそぶ)。









や、ばい。









腰抜けるかも…。





こんな体験初めてで、どうしたらいいのかわからない。





いや、どうすることもできないんだけど。











腰が抜けて、地面に座り込むとキスもやむ。







「っはあ、はあっはあ」







「ちょっと刺激が強すぎた?」









しゃがんで目線を合わせてくる楓くんにまだ酸素の足りてない頭が思考回路を間違えたのか、カッコいいなんて思わせる。









いや、かっこいいけども!









こんなキス魔ごめんだわ!









「俺、榎戸楓(えのきどかえで)。8組ね」









「あ、そーですか」









手を差し伸べられて立つと、また手を握って歩き始めた。









「俺の事、楓くん、じゃなくて、楓って呼んでね。」









「え、うん。楓」









「お、意外と素直だな」









「意外とってなに!」