水没ワンダーランド


屋敷の奥のそのまた奥で。



「ねこさん、ねこさん、こねこさん」



幼い誰かが小さな歌を歌っている。




「私のか・わ・い・い ミスリトルリリィ」



ところどころ音程が外れたその歌に合わせて



何か、水を含んだ柔らかいものが打ち付けられる音がする。



「おもちゃもごはんもたくさんあるわ、なのにどうして」




ベチャリ。



グチャリ。



まるで手拍子のように絶妙なタイミングで、少女の歌に効果音を添える。




「お洋服だってたくさんあるわ。ジェリービーンズだって好きなだけあげるから」



グチャリ



「なのに、どうして♪」




スージーよりももっと小さな女の子が一瞬、息を呑むようにして歌を止め。




そして、満面の笑みと共に口を開いた。



「どうして?どうして?どうして!?」



ベチャ、グチャ、グチャリ。


突然、狂ったように歌声をあらげ腕を上下させる。




グチャリ。



少女が腕を振る度に、水気を含んだ音が鳴る。



しばらく激しい剣幕で「どうして」を叫び続けたと思えば、しばらくして消え入るように声を掠れさせた。



少女の肩がプルプルと震える。



お手玉のように

弄んでいた



肉塊を、投げ捨てて。




(人の子ほどある大きさのそれは、もはや原型が人間であったのか動物であったのかもわからないほど血で汚れて変形していた)




散々、それを叩きつけていたせいで少女が居る部屋の壁はどこを見ても血で汚れている。


そして少女はうなだれ、髪の毛をかきむしった。


丁寧にセットされた漆黒の髪の毛が、少女の指の血でじんわり赤く染まる。



「どうして 逃げちゃったの」