「私の名前はクイーン。よろしくね」
「…クイーン?」
確かに服装は明らかに時代錯誤だか、旧ヨーロッパの貴族みたいだ。
コスプレにしては、ドレスが妙にしっくりと体に似合っている。
しかし、自分を女王と名乗るとは。
那智は唖然とした。
「そう、クイーン。でもこの世界の支配する女王ではないわ」
「…えっと…」
ネタのつもり?
喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。
クイーンは続ける。
「この世界のニンゲンはイモムシと同じくらい頭が悪いみたいだから、単刀直入に言いましょう。」
「…イモムシに頭がいいとか悪いとかあるのか?」
「それが、愚かだって言うのよ。未知を受け入れなさい、那智」
(無茶苦茶だ……)
「さて。……この世界で生まれる"汚い感情"、"歪み"、"異変"は全てある場所にたどり着くの。
それは遥か昔、この世界が誕生したときから変わらないことよ。
ある場所は、…そうね、異世界とでも言おうかしら。異世界はこっちの世界の人間が生を営む際に生じる小さな小さな"汚い感情"を吸い集めてきた。それは憎悪だったり嫌悪だったり狂いだったり…様々だけど……そうして集まった"汚い感情"たちを、異世界で浄化し元の世界に還す。
だからこの世界は今まで崩壊せず存在することができた。世界を崩壊させる材料となる歪みを吸い取り、浄化し循環してくれる異世界のおかげで、ね」
「……」
那智は混乱していた。
どんな難関高校の受験問題でもスラスラと解いていた那智が、今回ばかりは苦戦した。
異世界?
憎悪?
循環?
世界の崩壊?
なんとなくは、分かる。
でも常人に理解できるスケールの話ではない。
信じられない。
クイーンの表情からすると本気の話なのだろうけど。
「…どこの、SF小説ですか?」


