水没ワンダーランド

人間が、消えたのだ。

こんな奇怪な事件が、今日の日本で起こりうることだろうか?


那智は、行方不明の人たちが「集団ドッキリ成功」のプラカードを掲げるところを想像した。



しかし、ドッキリではない。



0,2秒の間にあんなにも大勢の人々が隠れられるわけがない。



なら、


本当に……



「人間がね、ゴッソリと消えちゃったのよ」



女の透き通った声がした。


しばらくテレビに釘付けになっていた那智はあわてて振り向く。




冷や汗がにじんだ。



異変が起きている。

街の白黒化、無音化、時間の停止、……そして人間の消失。



そして、そんなとてつもない異変に包まれている池袋の中で、


まともなのは(少なくとも色があって音があって時間が止まっていないのは)



「何か言いたそうな顔ね?Mr.那智」




俺と、この女だけだ。