「そんな低いとこからじゃ届くわけないでしょ?まったく。」


っ……バカに呆れられた!


女の子が何人かクスクス笑っている。


その中には僕の好きな花野さんまでいた。


可愛らしく、クスクス、クスクスって。


噂じゃ花野さんは恐ろしいことにこのバカが好きらしい。


「おのれぇ……」


怒りが噴火点に達した僕は委員長としての自覚を何処かに置き忘れて、机に飛び乗ると黒埼に掴みかかった。


「わぁ、ついに委員長が切れたぞ。」


「つか、今までキれてなかったのかよっ」


ものすごい勢いで飛びついた俺を黒埼が慌ててなだめる。


「ゆ、ゆきちゃん、落ち着いて、ね、ごめんね、ほら、そんな暴れたら落ちるって、落ちる、落ちる…ゆきちゃんっ‼」


「‼‼」


その瞬間、世界が反転した。


「わぁ、いんちょが落ちたぁっ」


「頭打ったんじゃない?」


「ゴツンっていったよな」


最後に聞いたのはクラスメートのめずらしくまじめなトーンの会話と、


「ゆきちゃん…」


って今にも泣きそうな黒埼の声だった。