バカの降る季節【短編】

……その後、教室にてクラスメートの中で交わされた会話。


「委員長って、バカだよなぁ。」


「カケルは勉強出来ないだけで、バカじゃないんだけどな……三途の川の話しで奴を懐柔できると思ってる委員長スゲぇ」


「さすがに神様うんぬんはないわぁ。いんちょって天然。」


「黒埼くん、絶対笑いこらえてたよね。」


「こらえまくってたね。」


「黒埼って、ほんと委員長のこと愛してるよなぁ。」


「愛してるよねぇ。」


数人がどうしようもないよねぇと顔を見合わせる。


ひねくれた子どもの黒埼が、委員長にかまって欲しくて何度となく繰り返してきたこと。


怒られたくてわざわざバカを演じて、ひっそり笑いをかみ殺す。


委員長のピュアな心が、黒埼のかわいた根性を潤しているのだろう。


おそらくこの先もずっと、黒埼はゆきちゃんを手放せない。


「はぁ」


誰かがため息をついた。


やわらかな風がカーテンを優しく揺らす。



窓にかかる影がたそがれる少年少女の姿を夕日からそっと隠した。