手首をつかむ力は強く、振りほどけそうにもない。 「王子のくせに」 「王子だからね」 剣を握ったりするんだよ、という王子は眩しいくらいイイ笑顔だ。 「腹黒狸」 「どうもありがとう」 またもや笑顔で返され、もう言い返すのも面倒。 私は脛をけって返事に変えた。 不意をついたと思ったそれすらも余裕でかわし、王子は腕を優しく引っ張って私を立たせた。 「ドレスは何がいい? 一応一通り揃えてあるけど」