そういえば。



楓には以前、ちらっとあたしの初恋の話をしたことを思い出す。



覚えてたんだ…。



「当然。梨乃が大事にしてた想いは俺にとっても大事なことだからね」



頭で思ったことが、口に出ていたらしいあたしに返ってきた言葉。



「平田先生、だっけ?俺、お礼言わないと」


名前まで覚えていたことに少しだけ驚いて、聞き返す。



「お礼?」


「うん。梨乃には悪いけど、梨乃の初恋が叶ってたら俺たちの今はないから」


その甘ったるい台詞に、変にドキドキしてまた楓を見つめると、ばちっと合う目。



楓は照れたのか、はにかんで目をそらす。



まったく。



照れるくらいなら言わなきゃいいのに。