なんで教えるんだ。
「あの歌を聴いたら、怖くなるんです。私は、あの歌を昔から聞いてる。あの歌を聴いたあとは、お母さんに怒られたり、お仕置きだって言われて、家に入れてもらえなかったり。かならずお父さんが助けてくれたんですけど、最近は…」
「あいつは、アンフェアを嫌う。だから、宣戦布告の合図をするんだ。」
つまり、正々堂々と、いじめをするって、教えているってことか…。
「いじめ自体がアンフェアなことだろ⁈」
「その辺はうまくやるんです。中学の時に疾風をかばってくれた池上先輩覚えてますか?」
もちろん覚えている。
池上百合子。クラスメート全員に無視されるようになった。
「相手には仲間がいる。なら、私だって仲間がいてもおかしくない」
これ、風歌の、口癖です、なんて、時雨は告げる。
「とりあえず、風歌は、明日何か仕掛けてくる。注意しろよ?」
「おう。」
俺は適当に返事をした。
何もわからなかった。
あいつらが怖がってる理由も、恐れてる理由も。


