「風歌、疾風は…」

あたしは風歌の怒りを鎮めようと少し、優しげな声で話す。いつもよりはかなり優しい声…。

「時雨は、いっつも、疾風疾風疾風!風歌のこと、考えてないじゃん!風歌の方が、お母さんたちに大切にされてるんだからね⁉バスケできなくなったのも、風歌のせいだって思ってるみたいだけど、元はと言えば、風歌の彼氏を時雨がとったんだから!時雨が、悪いんだから!」

それは、風歌に、魅力がなかっただけでしょう…?あたしは、ずーっと、バスケが恋人だったんだから。

「とった覚えなんかないわ!風歌を大事にしてって、言っただけよ!」

「それがおせっかいなのよっ!」

「ストップ。しぃ、俺は一人で頑張るから。」

「あら風歌、時雨、疾風くんも。仲が良いのはいいけれど、ご近所に聞こえるわよ?」

目の笑ってない笑顔で、母親が顔を出す。

「お母さん!」

風歌が、さっと、母親に飛びつく。

「疾風くん、お母様から伝言よ。しばらくウチに泊まりなさい。お母様が、借金どうのこうのっていってたわ。服とか荷物だけ持って来なさい?」