疾風は、そのボールをゴールへと投げた。
疾風も綺麗なフォームだ。
そして、もちろん落とすこともない。
「ふーん。流石だね。まぁ、聞いた通り、かな。」
「…聞いたとおり?」
「ん?そーだよ。姫島さんのは面白みのない形にはまったバスケ。僕は好きじゃないけど、やっぱり強いね。堅実なバスケはさ。」
こんなこと疾風は初めて言われた。
「僕は藤堂さんや、仁科さんのような、魅せるバスケが好きだ。まぁ、あの二人は無意識にそんなバスケをしてるだろうけど。楽しそうだから。」
「堅実のなにが悪い。シュートのフォームなんて、綺麗じゃなきゃ入らない。安全策のなにが悪い。」
マズい。疾風がキレかかってる。
「悪くはないよ。でも、楽しい?」
……思い出してみれば、疾風は、時雨と1on1している時が一番楽しそうにバスケをする。
試合では楽しそうと言うより、勝たなきゃいけないって言うプレッシャーの方が大きいんじゃないか、そういいたくなる。
「疾風、」
「…楽しくない。でも、勝てば楽しい。嬉しい。強くなっていくって実感できるのが1番楽しい。」
疾風はそれだけ言い切ると、体育館に思い切り寝転がった。
これから五分は絶対に起きない。
「…え、言うだけいって寝たの?」


