「ぁ、でも、今日だけは別。八瀬さんと会う約束してるから。」

あぁ、そうかと返しながらも、八瀬さんという人物を頭の中で浮かべる。

「八瀬さんって誰だ?」

俺の中で結局結びつかず疾風に問う。

「佐倉ん家のメイドさん。」

「はぁぁぁぁぁっ⁈」

俺の驚いた声に、一瞬周りが俺を見る。やべっと思って座ると、疾風は不思議そうにしている。

「お前、いくらなんでも、人ん家のメイドさんに手を出すなよ‼︎それにお前は時雨が好きなんじゃ…」

「お前もかよ…。いいか、俺と八瀬さんが会う理由は親父のことだ。」

ということは…!

「親父さんの妹かもしれないってことか…」

前に聞いた。伊豆蔵姉が家族を壊すことを楽しんでる、と。

それが疾風の家だったのかもしれない。

だったらなんだか納得だ。

「大正解。」

ニコリと笑う姿は男の俺から見ても綺麗で

なんとなく癪に障るから、腹を軽く膝蹴りしておく。

一応我が部のエースだから本気でやって潰れてもらったら困る。

「で、俺はどうすればいいんだ?」

「あー、今日のメニューは風歌に話してあるから、聞いてくれ。しぃはなんか用事あるらしくて、部活休むって。」