「やっぱ、時雨にはかなわねぇな。」


にやっと、平助は、笑った。

「俺も、いつも通りやるか。」

いきなり、平助の動きが変わった。


さっきまでのような、守りのような安全なオフェンスが、終わりかけた。

昔のような、攻撃的なオフェンス。

俺もこっちの、オフェンスの方が好きだ。

きっと、この、予測のつかない動きが、平助の強さだと思うから。

「この動きを待ってた。」

ニコッと笑った、しぃの笑みには余裕が消えていた。

本当に楽しそうに、笑った。

いつもそうだ。

しぃは、平助との1on1の時、とても良い顔をする。


「そろそろ、本気出さないと、あたし、」

ニヤリと笑ったしぃの顔には余裕だけが含まれていた。


そして、ボールを取り

平助にいう。

「あたしの勝ち。」


しぃがボールをとった瞬間は、ほぼ、一瞬だった。

手を出したと思うと同時に、もう、平助の手にボールはなかった。

「なっ⁉」

「あたしが女だから、手を抜いてやったなんて思ってんの⁈あめぇよ。それは、一度でもあたしに勝ってからやれよ。」

「は、はは。もう一回しよーぜ?ただ、お前も手を抜くなよ?」

しぃが手を抜いていたことなんかすぐにわかる。

「ふ、二人とも手を抜いてたんですか⁈」