「なぁ、恭介。」
「どうした?」
俺は毎日、朝、ばあちゃんに愛理を預け、学校から帰ると愛理を迎えに行く、という生活を繰り返していた。
「愛理を、養子に出そうと思うんだ。」
いきなり、しかも、真面目な顔で言う。
「ちょ、冗談にしてはひどくね?そんな真面目な顔で言うなよ!」
俺は、嫌な予感がした。兄貴が真面目に言うってことは冗談じゃないことくらい、気づいていた。気づいていながら、気づかない振りがしたかった。
「冗談じゃない。じいちゃんも、ばあちゃんも、知ってる。」
「…二人はなんて言ってんだ?」
「…少しさみしそうだったけど了承してくれた。」
気づけば俺は、兄貴の胸ぐらをつかんでいた。
「ふざけんなっ‼︎」
兄貴は抵抗しない。それがさらに俺をイラつかせる。
抵抗して、俺に攻撃してくれれば、もっと、俺だってキレやすいのに。
兄貴が抵抗しないから、俺は一方的な気がして嫌だ。
「愛理を、育てられると思うか?」
「そんなの協力すれば…!」
「正直、俺は無理だと思ってる。これから俺は残業が多くなるし、お前は、部活のことだってあるだろう。ばあちゃんは、お前とばあちゃん本人には隠してたけど、病気だ。じいちゃんは、ばあちゃんの面倒と仕事とで忙しい。誰が面倒を見るんだ?楓叔母さんは、協力すると言ってはくれたが、あの人にだって家族がいる。だからこそ、養子に出すべきだと思うんだ。」
「俺たちの妹だろ⁈」
今の俺はただ、どっしりと構えた猛獣にキーキー言ってる小動物だ。
「妹だからこそ、辛い思いさせたくない。俺はこれから転勤が多くなる。」
兄貴の中では、もう決定してるんだろう。
それがわかってるから、俺の反論は無駄だ。それでも、愛理を、養子には出したくないと言うのは本音で。


