「さすが。時雨。」
「まぁ、あの家族のおかげですね。演技は。」
あたしと倫先輩は、笑いながらドリンクを作って行く。
「時雨、あいつら、泣いてね?」
部室から、体育館は丸見え。それは、体育館の外のベランダももちろん。
「疾風、何言ったんだろう……。」
「てか、疾風、昔、あいつらにも、いじめられてたよな?」
「そうですね。疾風のものをとったり、疾風の教科書類を捨てたり破ったり、燃やしたり……。」
あたしは、ずっと不思議だった。
風歌が、くる確率の高い、この高校をなぜ疾風は選んだのか…。
「しぃー!」
「疾風、ドリンク出来たよ。持って行ってくれる?」
「あ、あぁ。」
疾風ににっこりとドリンクを渡して、倫先輩に向き直る。
「倫先輩。他に仕事、ありますか?」
「んー、ないから、体育館のこぼされたドリンクの片付けだな。」
「はーい。」
あたしは雑巾を持って、体育館へ急いだ。


