「まぁ、あんたにはわからないと思うわ。あの子、ちょくちょく入院してたでしょ?あれは、家に帰ってたのよ。」
確かに見舞いには行かせてもらえなかった。
毎日のようにしつこく行ったら、検査入院だから問題ない。大事にしないでくれ、と言われた覚えもある。
「そんなこと、なんで知ってるんだ?」
陣が不思議そうに首を傾げる。
「秘密よ、それよりあんたたち、どうせあたしに平澤のこと、撤回してって言いに来たんでしょ?」
「あぁ。」
伊藤が頷いた。
俺もつられて頷く。
「頼むから…撤回してくれないか?」
「そんなことしたら、あたしが悪者になるじゃない。」
そうだろうが。
本当のこと、なんでそれを言ったらいけないんだ。
「あたし、人生めちゃくちゃにしたくないの。あたしの通る道は青信号ばっかりでなくちゃダメ。あたしは薔薇色の人生を送る。そのためにも…時雨が必要なのよ。」
なんで…なんでしぃが巻き込まれるんだ。
それはお前の問題で…しぃの問題じゃないだろ。
「雪歩?女の子が来たわよ?」
階下から、声が響く。
女の子…?
もしかして
「時雨かしら?ふふ。」
そう言って俺たちに背を向けた。
そして、そのまま伊豆蔵は、部屋をでてった。
「しぃ、な訳ないよな?」
「こうなるといけないから、なにも言わなかったんだろ⁈」
「もしかして…神楽さんが。」
しぃじゃありませんように、そう祈りながら、待つ。
「時雨、ちょっと待ってて?」
ドアの前でそんな声が聞こえて、俺たちは息を飲む。
「ふふ、あんたたち、手を出して。」
あぁ、そうだ。こいつは時雨の悲しむ顔、苦しむ顔を見たがってるんだ…。
「さて、今からはあたしの言うこと聞かないと、あんたら三人に襲われたってことにするから。」
…!それだけは困る。いや、困るなんてレベルじゃない。
バスケ部の運命が……
「手を出して。」
無言を肯定かと思ったのか、命令がされる。
ロープで結ぶ気だろうか。
あぁ、そうみたいだ。
俺たち三人を結び終わると、伊豆蔵は、しぃを迎え入れるためなのかクッションを床に起き、笑顔を作った。
「入って来ていいわよ。時雨。」
「失礼します。」
あぁ、俺の好きな声だ。
俺の好きな人の声。


