雨のち晴れ


「どうせ、疾風も行ってるんでしょ⁇疾風は、雪歩先輩がダメなんだよ?ねぇ、おじさんが目を覚ます前に疾風の精神をめちゃくちゃにする気⁈」

あたしは、神楽にぃにただ、掴みかかった。

「時雨、落ち着け。」

平助や倫先輩が、あたしを落ち着かせようとするけど、あたしにとってそんなの邪魔なだけで。

「うるさい!もう、みんな放っておいてよ!」

そう叫んであたしは、走り出そうとした。

「時雨、」

今まで口を開かなかったトーマに呼び止められ、とっさに振り向く。

それと同時に頬に鈍い痛みが広がる。

痛い、痛い。

「…トーマ…」

「せ、先輩、」

「おい、本田、時雨は女だぞ?」

あたしは、殴られたと言う事実に、頬を抑えていた。

「痛いか?」

「当たり前でしょ。」

「悪かったな。でも、お前が、倫先輩や、平助の気持ちを考えてないから、殴った。」

…え?

「倫先輩も、平助も、部長のこと、心配してないわけない。だけど、それぞれの役割があるだろ。陣先輩と伊藤先輩がいるなら、大丈夫だ。」

そんな根拠のないこと言われても、あたしは安心なんかできない。

だって…疾風は、


疾風は…

「お前は、昔から疾風ばっかり心配しすぎだ。疾風のことを思うなら信じてやれ。な?」

わかってるよ…そんなこと…

でも、でも、失いたくないんだよ?
大事な人を。