雨のち晴れ


夜遅く。いやもはや深夜と言ってもいい時間に、家の中にこっそり入る。

着替えはいつも、暁に預けていたから問題はない。風呂も銭湯に行って済ませてきたし、母親の虐待のことを知ってる親父は俺の部屋に冷蔵庫やテレビ、鍵をつけるのを許してくれている。

「遅かったじゃない。陣。もう深夜よ?5日間も帰ってこないで何をしていたの。」

普通の言葉に聞こえるだろう。

この状況でなければ。

「…夜更かしは肌に悪いですよ。奥さん。」

「どうしてこんな悪い子に育ってしまったの?ママは陣をそんな子に育てた覚えはないわ。きっと、あの子のせいね。暁くん…だったかしら。そんな悪い子なんか、殺してしまえばいいかしら。ねぇ、陣?ママはあなたの将来のことを心配してるの。頼むから、ママのいう通りにして頂戴?」

ははっ、ふざけんな。笑わせるな。

暁が俺を巻き込んだとでも思ってるのか?

違う。俺は自分の意思でこうなってるんだよ。

何がママだ。そんな年じゃないだろう。

「陣?聞いてるの?…」
「聞いてねーよ。俺に指図すんなよ。」

あぁ、悪い癖だ。

反抗した予定だけど、逆に怒らせることになる。

流せばいいのに…流すことができない。

「…悪い子にはお仕置きしなくちゃ…。」

そう言うと俺に向かって飛びかかってきた。

女とは思えない力だ。