「裏切られるのが怖くて、今までのこと黙ってた。だけど…話さないといけないのかもしれない。」
俺たちは、陣の言葉に静かになる。
静かになるなんてものじゃない。
ほんとうにシーンと物音一つしないような感覚。
「俺は、女に触れることができない。触られるのも苦手だし、話すのすら聖理奈さんや時雨、風歌、義理の母や腹違いの妹を除いた女は無理だ。目線すら合わせたくない。」
女嫌いっつーか、恐怖症みたいだな。
セリさんは触ってたのにいいのか?
「俺は…昔…虐待を受けていたんだ…。今の母じゃない。俺の生みの母親から。」
生みの親…⁈
「親父は息子の俺から見ても整った顔立ちをしてる。でも、母親は、美人ではなかった。俺も母親には、全然似てなかった…。」
俺たちはただ、黙っていた。
「だからか、母親は、俺の顔をよく殴った。腫れることもあった。小学校までは我慢してた。でも中学になって、反抗したくて、俺は喧嘩ばっかりに明け暮れた。そんな時に、後輩が女を紹介してきたんだ…。」
きっとそれが全ての始まりだったんだろう。


