雨のち晴れ


赤羽倫先輩があたしたちに声を掛ける。


「ちげーよっ!倫!」

「手つないだまんまなんかじゃ、説得力ねーよ?疾風。」

「なっ///」

疾風は過剰に反応する。

それが面白がられてるだけって気づかないのが、疾風の面白いところ。

「なぁ、時雨、ドリンク頼むわ。」


「はい。倫先輩。」

倫先輩は、あたしと同じマネージャーなのに、なぜか、力仕事以外しか、やらせてくれない。

力仕事は全部、倫先輩。

もともと、選手だったからかな…?

「倫先輩、今日は休みいますか?」

「あー、飯嶋が、休み。」

「ありがとうございます!」

飯嶋くんは、たしか、薄味が好みだったから…。

えと、今日は薄味が12人、規定通りが、15人、濃い味が、8人、で、少しずつ、グレープフルーツ混ぜて…

できた!

それから、もう一種類。

グレープフルーツに、レモンに、オレンジを混ぜたドリンク。

これは2人。


倫先輩と、疾風。

休憩の声がかかるまで、あたしは洗濯に手を出す。朝練の時に、洗って乾かしてたから、乾いたはず。

うん。乾いてる。

タオルをカゴにいれて、それから、まだ暇なので、部室の掃除をして見る。


「休憩!」

あたしは、その言葉を聞き、タオルと、ドリンクを持って行く。

「これが薄味、こっちは、普通の、こっちが濃いめです!」

それだけ言って、あたしは、、

2人にドリンクを渡す。

「はい、疾風と倫先輩の分!」

「俺のはいいのに。」

苦笑しながらも倫先輩は受け取ってくれる。

「力仕事、やってもらってますから。」

「だって、時雨、力ねーじゃん。」

「そー、ですね。」

言われたくなかった。


あたしは、その言葉が嫌いだ。

力がない。そんなことないと言えないのが悔しい。

「ぁ、悪りぃ。」

「大丈夫です。本当の事ですから。」

なんで、力がないんだっけ。

そうだ。

母親だ。

母親があたしの手を殴ったんだ。なんだか、すごく長くて硬い棒で。

痛くて痛くて、一晩中泣き叫んだ。