病院は、人が多い。
「あら、伊藤くんに疾風くん。」
「ぁ、あの陣は?」
「あの子…何も言わないの。頑なに転んだ、としか。絶対殴られたような跡がいーっぱいあるのに。ねぇ、雛。」
「うん。いーっぱいあるの。」
陣の母さんは陣の妹、雛に話しかける。
雛は雛で俺たちに教えようと大きな身振りで俺たちに伝えてくれる。
「足の骨が折れてるし、頭も打ってるみたいで、一応検査入院ですって。病室にいるから行ってあげてくれないかしら?」
「はい、もちろんです。」
伊藤が答えて、俺たちは陣の病室へと向かった。
「陣?」
「伊藤に、疾風。」
俺たちに気がついたらしく、陣は体を起こす。
「何やってんだよ。しばらくバスケできねーな。」
俺は少し茶化すように言った。
普段、少し安静にする必要があるような怪我をした部員に言うように…。
「…疾風、俺部活やめるわ。俺がいても迷惑なだけだし。」
「何言ってんだよ、陣。」
俺は陣を凝視する。
なんで、陣が部活を辞める必要がある。
そんな必要ない。
「こんな時に冗談?笑えないよ。」
伊藤は、陣に詰め寄る。
つられて俺も。
「バカ。冗談じゃねーよ。俺の穴は佐倉が埋めるだろ?バカ言ってんじゃねーよ。」
「バカ言ってんのはてめーの方だろうが陣!」
…伊藤が…キレた。
初めてだ。こんなに、大声で怒鳴るのは。
部活でも後輩に対して、キレた、とは聞いていたけど…


