「でも。高校生になってから、笑顔が増えたんです。楽しそうに学校の話をするようになりました。だから、坊っちゃんのこと、利用した時は…坊っちゃんが許しても私が許しません。」
「それなら、そんなことあり得ません。俺たちが佐倉が、えっと、」
「お金持ちということを初めて知りました。」
伊藤が俺の言葉を繋いでくれる。
「佐倉は、バスケに対して、真剣に向き合っています。センスもあります。欲もあるし、何より目がキラキラしてる。そんな佐倉が後輩として、大好きです。すごく可愛い存在です。それは、僕だけじゃない。ここに来たみんなです。」
そう言うと伊藤は立ち上がる。
病院に行くので、と一言いい、玄関へと向かう。
「坊っちゃんのことよろしくお願いします。」
再度、八瀬さんは、俺たちに頭を下げた。
急いで俺たちは駅まで走り、病院へと急ぐ。陣に会えるように。
電車で、学校までの駅から二駅分。
伊藤と二人でただ、黙って電車に揺られていた。


