「そうです。沙苗です。」
「佳苗先輩の双子の妹だったよな。」
バスケ部の先輩で、佳苗先輩はマネージャーで、すごくお世話になった。
沙苗先輩は、一年の前半までは女子バスケ部だったあたしに、辞めてからも優しく接してくれた。
何度かお見舞いには行ったけど、佳苗先輩の辛そうな顔が見られなくて、最近は行けてない。
「佳苗、沙苗のために伊豆蔵潰そうとしたんですけど…父が嫌がって。家の権力使うなら、自分が家の当主になってからと、言い放ちまして…。」
「…俺たち自身で何とかするしかないだろ。」
ずっと黙ってたトーマが言った。
その言葉に三人で一斉にうつむいていた顔を上げる。
「金持ちとかさ、関係なくね?人として最低なことやってるんだから。」
「!そうね。あたしたちでなんとかしよ!」
だって、陣先輩にあたしは迷惑かけっぱなしだから。
「時雨!」
「倫先輩!」
倫先輩の後に伊藤先輩と疾風が続いている。
遅れて風歌も、走ってきた、
きっと、みんな、かなり急いだんだだろうな。
呼吸が乱れてる。
「職員室、乗り込むぞ。陣のことで、午後の授業、中止するらしい。」
「は?中止までして、会議することじゃないよね⁉︎」
「相手が伊豆蔵だからだよ。」
そんなにすごい人ではない。
むしろ何もできない人。
なのにここまでやれる人。
一番厄介だ。


