俺は…バカだ。

「兄貴。お袋、迎えに行こう。」

きっと一人で歩いてる。30分かかる道を、バスも使わずに一人でトボトボと。

「!…あぁ。」

兄貴は笑顔を俺に向けた。

家から出る。病院までの道のりをたどる。


「お袋。」

俺がまず声をかける。

兄貴も、俺と同じように声をかける。

「神楽…疾風…。」

「「一緒に帰ろう。」」

久しぶりに、と俺は心の中で付け加えた。

「…!えぇ、帰りましょう。」

お袋は、やっと一年分の笑顔を見せた。

俺が一年間見えなかった笑顔。

餓鬼のころから嫌いじゃない笑み。

いや、むしろ…

俺はこの笑みが大好きだ。


「あと、これからは、俺だけには嘘つくなよな。俺だけなんも知らねえってなんかダサいし。」

「バスケに集中して欲しかったのよ。疾風がバスケをしてる姿が、私もお父さんも一番好きなんだから。」