「親父もお袋もお前を傷つけたくなかったんだよ。」
唐突に兄貴が俺の方を向いて言う。
「兄貴は…知ってるのかよ。」
「…少なくとも、お袋が、ホスト通いってお前に嘘ついて夜中まで働いてたことと、愛人のところって嘘ついて、親父仕事減らして、実の妹探しながらほぼ、毎日家に帰らなかったこととかな。」
…妹?
「親父の実家で会えるんじゃねーの?」
実家に戻ると言ってよく、母親と、出かけていた。日帰りだから近いんだろうくらいにしか思ってなかったけど
俺も行きたいなと何度も思ったことがある。
「そうだったな。お前は知らないんだった。親父の両親は親父が22の頃亡くなった。で、16の弟と、0歳の妹いたんだ。で、妹だけ、養子に出したんだよ。育てられないからって。」
叔父は、知ってる。よくうちに来て俺と兄貴をからかって帰る。
たまにすごいお土産くれるから文句は言えない相手。
「叔父さん以外にも兄弟がいたってことか…。」
「そーゆーこと。で、その人が25になるまでは合わないって決めてたんだってさ。」
つまり…
「兄貴と、5歳差の叔母さんがいるってことだな?」
「まぁ、そーゆーことだ。」
それなら、お袋が働く理由は分かる。
きっと、親父が探している間、俺たちに金を入れるために、不自由な思いをさせないために、働いてくれたんだろう。


