「…親父、起きろよ…。」
兄貴は小さな声で言った。
「あんたの恋人が、隣にいるんだから。」
変わらずに小さな声で話し続ける。
「親父を大事に思うやつなんて、もう、恋人以外にいねぇだろうが。お袋だって…認めたんだろ。」
…!
幼い頃の記憶をたどる。
見てて恥ずかしいくらい仲のいい夫婦だった。いつでも、手をつないでいるか腕を組んでいるかしてるし、小学生の俺たちを放っておいてよく二人でデートもしてた。
そのせいか、家族と出かけることは少なかったけど、俺の両親は仲がいいことだけが自慢だった。
「神楽、疾風。…八瀬さん…。」
母親が俺たちに気づいて名前を呼ぶ。
八瀬さんのことは知っているらしい。
それにしても、母親は痩せている。
いや、痩せ細っている。
一年くらいあってないからわからなかったけど、痩せたというより、頬がこけたのほうが、正しい。


